樹木文化を伝える活動
(財)日本緑化センター発刊グリーン・エージ2012/12月号掲載
樹木文化の伝承 文字数が限られているため、樹木などのもつ魅力を十分紹介できていませんが、今後の講座などでお伝えして行こうと思います.
巨木・名木探訪と森林浴
かく丸ランド樹木医事務所 宮原 康二
経緯
一日に一本の樹木を見て帰る。当初はこの講座に驚いた参加者も多く、不思議な魅力があったのか、「NHKカルチャー松本教室」の企画によるこの講座も来年で4 年目を向かえる。
この不思議な魅力というのはいうまでもなく樹木の持つ生命力(先天の一気)であり、またそれは樹の声ともいわれる…。
この樹の声を例えるならば、山と海であり、樹木はひたすら山のように、より高く伸びようとし、
また、海のようにどこまでもその枝葉を広げようとする。そして、海闊の如くすべてを与え受け入れてくれるのである。
生けるものとして同じ根源を持つ我々もまた同様の力を持っていて然るべきであり、その根源の部分で繋がっている(同調)ことも確かである。そんな樹木のもつ魅力を、人に少しでも伝えたく、この講座を引き受けた。
樹林を訪れる心がけ
4 ~ 12 月の間、40 名前後の参加者と月2 回樹林探訪に出かける。参加者は30 ~ 70 歳代と幅広く、その内男性は8名程、夫婦での参加が5組程である。
一口に巨樹探訪といっても、一人で自由に訪ねるのとは訳が違うことはいうまでもない。特に中型バスでの探訪のため、山の中へ行くは良いが、廻れない・通れない・止められないではシャレにならない。当たり前のことだがこの判断がなかなか難しい…。
また、時節・天候・巨樹に辿り着くまでの歩く距離・時間配分・安全対策・体調など、参加者を鑑みて、その都度旅のスケジュールを決める必要がある。これらを判断し企画するには、下見による検討が不可欠であり最も大切である。無事辿り着けるかどうか、キンチョウは夏によく使われるが毎度緊張しまくりである。
巨樹探訪では観光地の様に、バス横付けにより見学できる所は限られており、その殆どはバス下車後、散策を伴う。当然森の中や、いなか道を歩く機会も多いのだが、最近では森林浴コースや社叢にランドマークとして巨樹を紹介している所も多くなり、森林浴を楽しみながら巨樹を巡礼することができる。
この講座の第一義は、ゆっくり・リラックスすることであり、そして”樹木(自然)と同調し、
得たエネルギーを以て社会生活を営む”ことである。これらは森林セラピーとも通ずるものでありその効果も同様と考える。2大効果でもあるストレスの低減ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の活性等をはじめ免疫機能の向上、感覚で捉え気づく、見る・嗅ぐ・聴く・触る・味わう(五感)、
などの要素も本講座に取り入れている。
娑婆を離れ、その効果を少しでも引き出せるように、樹を見るとき、散策のとき、携帯のイスを持って過す。ゆっくり座って樹を見る、ゆっくり歩き・座って休む、そして深(森)呼吸する。これらの行為は、より樹木(自然)と同調できるように必要なこととして、目的地に向うバスの中から穏やかな気持ちで過ごせるよう努めている。ちなみに私のリュックは、いつも携帯イス10 数個でいっぱいだ。
樹木文化を伝える意義
講座でご婦人が樹勢の衰えた老樹を見て、「この樹、私みたいだ」とつぶやいた。それは恐らく自分の人生と、風雪を耐えしのぎ、なお活きぬく老樹とが重なってみえたのであろう。人は樹木(自然)を自分の心の鏡として、様々なことに思いを馳せる(内観)と同時に、確かな創造的エネルギーを感じる。
樹木と共にある自分、樹木と共に創造的に歩んできた社会、これこそが樹木文化であり伝承すべき所以である。大げさでなく、共にある樹木によって守られる我々の命、これが第一義であろう。
今後に向けて
樹木愛という言葉がある(上原敬二)。この講座を通じて、 参加者の皆様が、異性に対すると同じように、心の合った樹木を見つけ出し、現実社会に少しでも潤いを見出すことができれば幸いと思う。
信濃路は木枯らし(落葉)の時節、樹々と共に春を謳う…。
以上
今まで見ていた樹木が、自然が、全く別のものに見える !
- ↑ こういった状況を目指します。
- 1年後、振り返ったとき、とてもやさしくなった自分に気づくかも・・・